セキュリティは「完璧」を目指さない
セキュリティ対策には終わりがなく、突き詰めればいくらでもコストをかけられます。中小企業が現実的にセキュリティと向き合うための、リスクベースの考え方を紹介します。
ゼロリスクという発想の落とし穴
「絶対に事故を起こさない」という目標を掲げると、対策は際限なく増えていきます。しかし、リスクをゼロにすることは現実的に不可能であり、それを目指すこと自体が別の問題を生みます。
過剰な対策は業務の利便性を大きく下げ、現場が正規の手順を避けて独自のやり方(シャドーIT)に流れる原因になります。結果として、管理されていない場所で業務データが扱われるようになり、かえってリスクが高まるという逆効果が起こり得ます。
リスクベースで考えるとは
セキュリティ対策の目的は、リスクをゼロにすることではなく、発生確率と影響の大きさに見合った対策を選ぶことです。考え方の手順としては、次のような整理が役立ちます。
- 何を守るか(資産)を洗い出す :顧客情報、契約書、財務データ、システムへのアクセス権限など
- それぞれが失われた場合の影響を見積もる :金銭的損失だけでなく、信用の失墜や事業継続への影響も含めて考えます
- 発生しうる脅威と、その起こりやすさを考える :業種や事業形態によって、直面しやすい脅威は異なります
- 影響とコストのバランスで対策の優先順位をつける :影響が大きく発生しやすいものから着手します
この順序を踏むことで、「なんとなく不安だから」ではなく、根拠を持って対策の優先順位を判断できるようになります。
「やりすぎ」も判断できるようにする
リスクベースの考え方は、対策を増やす方向だけでなく、「ここまでは不要」と判断する場面でも役立ちます。従業員数人の組織が、大企業向けの統合セキュリティ製品を導入しても、運用できる体制がなければ機能しません。規模に見合わない対策は、コストが見合わないだけでなく、形骸化して現場に定着しない結果につながります。
完璧を目指さないことは、対策をしないこととは違う
リスクベースで考えるというのは、「対策をしなくてよい」という意味ではありません。優先度の高いリスクには確実に対応し、優先度の低いリスクは許容するという判断を、意識的に行うということです。何を許容し、何には投資するかを言語化しておくことで、限られたリソースの中でも一貫した対策を続けられます。