常にバッファを意識しておく

「完璧なスケジュールを立てたはずなのに、始まってみたら遅れっぱなし……」 これは、ITプロジェクトに限らず、あらゆるマネジメントの現場で起きる現象です。

プロジェクトを成功させるPMが、計画段階から必ず仕込んでいるものがあります。それが 「バッファ(ゆとり)」 です。今回は、なぜバッファが必要なのか、どう確保すべきかを解説します。

バッファは「サボり」ではなく「保険」

「バッファを持たせる」と言うと、上層部から「もっと詰められないのか?」「余裕を持ちすぎではないか?」と指摘されることがあります。しかし、プロジェクトにおいて「予定通りに進む」ことはまずありません。

  • 主要メンバーが急病で休む
  • 使っているツールに想定外の不具合が見つかる
  • 経営層から突然の仕様変更が入る

こうした「予測できないトラブル」は必ず起きます。バッファとは、こうしたトラブルが起きたときでも、最終的な納期や予算を守るための 「保険」 なのです。

研究によれば、プロジェクトの見積もりには「楽観バイアス」が働くことが多く、人は計画段階で意図せずリスクを過小評価する傾向があります。バッファの設定は、このバイアスを補正するための合理的な手法です。

2種類のバッファ

管理すべきバッファには、大きく分けて2つあります。

スケジュールバッファ(時間)

各タスクの期限をカツカツに設定するのではなく、全体として数週間から数ヶ月の「予備期間」を後ろに置いておきます。タスクが遅れた際は、この予備期間を削ることで、最終納期への影響を防ぎます。

スケジュールバッファの目安として、全体期間の 10〜20% を確保することが一般的です。6ヶ月のプロジェクトであれば、3〜5週間のバッファを最後に設ける形です。

コストバッファ(予算)

見積もり金額ギリギリで予算を組むのではなく、不測の事態や仕様変更に備えて 10〜20%程度 の予備費をあらかじめ確保しておきます。

この予備費は、プロジェクトの性質によって変えます。過去に類似プロジェクトの実績があり、リスクが小さい場合は10%程度、新規ビジネス領域や技術的な不確実性が高い場合は20〜30%が現実的です。

バッファの「使い方」のルールを決める

バッファは「設けるだけ」では意味がありません。「いつ・誰が・どのような判断で使うか」を事前に決めておくことが重要です。

  • 使用の承認権限: バッファを使う際はPMが判断するが、全体の50%を超える場合は経営層への報告と承認を要する。
  • 残量の報告: 毎週の定例会議でバッファの残量を共有し、消費ペースが速ければ早期に対策を打つ。
  • 使い方の記録: 何のトラブルにバッファを何日・何円使ったかを記録し、次のプロジェクトの見積もり精度向上に活かす。

バッファをどう説明するか

社内でバッファを認めさせるには、伝え方の工夫が必要です。

「余裕を持たせています」と言うのではなく、 「リスク対応期間として確保しています」 と伝えます。過去のプロジェクトでのトラブル事例を引き合いに出し、「これらの不確実性を吸収し、確実にリリースを成功させるための管理手法である」と説明することが重要です。

また、バッファを使わなかった場合は「早期完了のボーナス」として次の改善投資に充てることを提案すると、経営層の理解を得やすくなります。「余裕を持たせた分を使わずに終わった」という実績の積み重ねが、次回のバッファ確保への信頼につながります。

まとめ:バッファがない計画は「計画」ではない

バッファのないスケジュールは、何一つトラブルが起きないことを前提とした「願望」に過ぎません。

PMの役割は、単に線を引くことではなく、プロジェクトを完遂させることです。最悪の事態を想定し、あらかじめ逃げ道(バッファ)を作っておく。その慎重さこそが、最終的にプロジェクトを成功に導くのです。